情報親方の泣く子も”わかる”マニュアル作成の9つのステップ

「○○君、来週までに新人教育用のマニュアル作っといてくれないか。」

そんなことを上司から突然言われた経験はないだろうか。簡単な業務ならなんとかできるかもしれないが、一般的な業務の“業務マニュアル”を短時間で作ることは難しい。

そもそも社内業務マニュアル作成する最大の目的は「業務の標準化」と「品質管理」だ。社内業務マニュアルが整備されることによって、経験の少ない従業員や発生頻度の低い業務でも効率的な仕事ができるようになる。そのためには、マニュアル作成の前に決めておくことがある。

しかし、ベンチャーや中小企業は日々の業務に追われ、事前の決めごとを飛ばしてマニュアル作成に取り掛かってしまう。結果、新人には分からない業務マニュアルだったり、あまりにも詳細になりすぎてボリュームだけが大きくなってしまったりする。

ここでは、社内業務マニュアルの制作作業や、業務経験者からレクチャーを受ける工数の確保も難しいベンチャーや中小企業でも、効率的に社内業務マニュアルを作成するポイントを、段階ごとに見ていこう。

社内業務マニュアルの仕様やスケジュールを決める

業務マニュアルの企画段階では次のような項目を決める。

  • 読み手の属性は、新人?管理職?アルバイト?社員?
  • 読み手のスキルレベル(習熟度)はどれくらいを想定するか?
  • 業務で要求されるスキルは何か?
  • マニュアルは組織内で制作するか、アウトソース(外注)で制作するか?
  • マニュアルに記載する情報量はミニマム(基本の業務を記載し、読み手の裁量にゆだねる)か、マキシマム(業務の全てを記載する)か?
  • 作業経験者の退職等、業務引き継ぎに時間制限がある場合は、作業経験者が最後まで制作に関われるか?


【図 マニュアルの情報量と読み手のスキルレベルをあわせる】

業務の全てをマニュアルに記載すると、個人の裁量がない「マニュアル対応」を生み出しやすくなる。読み手のモチベーションも低下しやすい。業務内容をどこまでマニュアル化するかは、組織のポリシーが表面化する部分なので慎重に決めたいところだ。

その他、マニュアル制作の詳細は、「情報親方の泣く子も”わかる”マニュアル作成の9つのステップ」を参考。

計画のコツ

  • 本業と平行してマニュアルを制作する場合「1日のうち15分だけ業務マニュアルを制作する」などとスケジュール化しておく。時間の確保が難しい状況でも少しでも進行できる仕組みをつくる。
  • 業務マニュアルは最初から完璧である必要はない。変化に対応したり、過不足を補ったりしながら精度を高めていく。

制作ツールはマニュアルの仕様で選ぶ

  • 紙で作成する業務マニュアルは、WORDやEXCEL、POWERPOINTなどのオフィス向けソフト、テキストエディタで十分制作できる。ツールや紙面レイアウトへのこだわりがある場合は、専用のソフトなどを使おう。
  • 業務マニュアルは隙間時間に繰り返し確認されることが多い。ノートパソコンやiPadなどで手軽に見られるようにするには、画面でも見やすいツールで制作すると、安価で管理や改訂がしやすく、電子マニュアルを作成できる。さらに、紙マニュアルとは異なり、電子マニュアルには動画や写真等を掲載できるため、動きのあるものや文章で表現しにくいものも伝わりやすい。
  • マニュアルは改訂があるのが基本となる。紙で印刷された業務マニュアルが必要でも、まずは電子マニュアルを作成しておくと便利だ。マニュアルの精度が向上した時点で冊子化すると効率がよい。

業務の情報を収集する

業務資料を集め、業務経験者から聞き取りをし、基本からノウハウまでを文字や図に表現するのが情報収集の段階だ。普段、何気なくやっている業務は、いざマニュアル化しようとすると、うまく表現しにくいもの。そのため、この情報収集の段階が重要になる。

コツは、日常的にメモやチャットツールなどを活用して、思いついたときに業務内容を記録しておくと効率がよい。マニュアル作成をアウトソース化する場合でも、業務内容を伝達する手順は必ず発生するので、記録を取ることは無駄にはならない。

もし、資料が何もない場合は、業務経験者に実際に業務を再現してもらう。それを別の人が手順や注意点を記録して、不明点を業務経験者に質問する。このように第三者が記録すれば、漏れなく情報を収集でき効率も良い。

業務内容を分析・整理する

特にベンチャー企業の場合、業務内容の分析をすると、新たな発見ができる場合が多い。昔のマニュアルのままで思っていたより工数がかかっている箇所や、足りない書類が判明したりする。業務マニュアルの制作プロセスはそんな発見も出来るいい機会だ。

複数人が関わる業務のマニュアル作成の場合は、収集した情報をすべて持ち寄り、KJ法(ブレインストーミングで出された情報を付箋紙等に1つずつ書き出し、関連している情報ごとに多階層のグループにまとめる方法)などを活用するのも有効だ。

情報整理の手順としては、次のようになる。

  1. 人、金、書類、成果物などの資源ごとに、作業を書き出してみる。
  2. 見積もり、請求、納品等のフェーズごとに作業を区切り、フロー図作成を作成したり、資源との関連づけをしたりする。
  3. 日時の制限(締め日、年次、月次、週次、日次)があればフロー図に記入し、作業にかかる工数のめやすを入れる。
  4. 集めた情報をフロー図にひもづけておく。


【図 資源とフェーズを関連づける】

業務マニュアルの構成を決める

マニュアルの構成を、大きな区切り(目次や概略)から小さな区切り(手順の説明)に自然と読めるように組み立てると、業務が俯瞰できるようになる。業務ルールとなりにくい「マナー」や「心遣い」などは、「コツ」として書くと円滑に業務が進められることが多い。

たとえば、冊子にする場合は、次のように順を追って冊子を構成する。

  1. 目次構成
  2. 業務の目的やターゲット、関連部署
  3. 業務の概要やフロー図
  4. 手順ごとの説明や注意点、コツ
  5. 参考資料

マニュアルを関係者で共有してブラッシュアップする

一通り業務マニュアルが形になってきたら、まずは業務経験者を含む関係者で共有し、内容をチェックする。

マニュアルを関係者全員が同じ環境で見られる場所に置き、コメントを自由に入れるようにするとよい。ただし、コメントはあら探しではないので、前向きな発言でおこないたい。

コメントがある程度たまったら、改善点を話し合う場を設け、マニュアルに反映した後に運用を開始する。

マニュアル運用後もブラッシュアップを繰り返す

運用後は、半期や年度の区切り等、定期的にマニュアルの内容をチェックする場を持つことが望ましい。

忙しい時ほど、基本的な部分を見失いがちになる。定期的に繰り返し見直して業務マニュアルを改訂することで、業務に対する新たな発見や改善がある。その積み重ねによって、経営面への効果も期待できるようになる。

特にスタートアップベンチャーのような成長スピードの早い企業では、現在の基準で業務マニュアルを作っても、すぐに不整合が出てきてしまう。適宜改訂することを意識しよう。

業務マニュアル作成は安価に効率よく

最後に、情報収集は各担当者で、分析やブラッシュアップは複数人でといったように、段階ごとに作業担当を分けると、特定の人に負担をかけることなく効率的にマニュアル作成できる。

組織内の作業者が確保できない場合、アウトソース化するほうが組織内作業を圧迫せず、最終的にリーズナブルな予算でできることもあるので、検討してみるとよいだろう。

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